25年の時を超えて

スキップ (新潮文庫)
スキップ (新潮文庫)
北村薫


『───気持ちは同じつもりでいても、時の波の間を泳いでいく間に、実は、その気持ちの──向きが少しずつずれて行くんだな。自分では、それと気づかない内にね』


北村薫はまってしまいそうです。
17歳高校生真理子。
運動会が大雨で中止になった夕方、目が覚めると知らない部屋にいた。
25年の時を「スキップ」して、17歳の真理子は42歳になっていた。
大人になるってどんなんだろうって、思う。
私が中学生の時、高校生になったら自分がどうなるかわからなかった。
私が高校生の時、大学生になったら自分がどうなるかわからなかった。
今、自分が誰かの奥さんになって誰かのお母さんになるなんてこと想像も付かない。
それでもこれから先順当に年をとっていけば、自然そういうことになってもおかしくないし、なってしまえばどうってことないと思う。
そう、「順当」にいけば。
主人公はスキップしたのだ。順当にではなく。
もちろん混乱もするし、拒絶も起こす。
でも逃げない。むしろ立ち向かう。
17歳の女の子がこんなに素敵な言葉が言えるのかとは思った。
でも、17歳だから言えるのかなとも思った。
体がおばさんでも心は花の乙女なのですよ。


『昨日という日があったらしい。明日という日があるらしい。だが、わたしには今がある』